top of page

『インド言語の授業開始から百周年』を祝う


~2010年インダス会総会を開催~ 東京外国語大学でインド言語の授業が始まってから1世紀が経過した。その百年を記念する2010年インダス会総会が、11月6日午後3時から、母校アゴラ・グローバル3階の会議室で開催された。 総会では、まず渡邉光一会長(H昭41)が挨拶。「インドを中心とする南アジア経済の目覚しい発展が進行する中で、ヒンディー、ウルドゥー両言語の教育と多様な地域研究の重要性が高まってきた。教授陣と学生、それに同窓会組織であるインダス会とが従来以上に多角的かつ緊密な関係を維持し、大学支援を図りたい。そのためには卒業生(OB,OG)の動向を恒常的に把握し、卒業生の協力を得ることが不可欠である」と述べ、今後の課題と抱負を語った。 続いて藤井毅教授(H昭56)が大学の近況を報告し、まず新しいインド言語の授業を開設する構想について明らかにした。同教授によると「インド東部地域とバングラデシシュの1億5千万人が使用する言語ベンガル語について、ヒンディー、ウルドゥーに次ぐ三番目の南アジア言語として授業を新設する構想が具体化されつつある」という。これが実現すれば、南・西アジア課程のカリキュラムに新たな展開が始まることになる。 このあと講演会に移り、大阪外国語大学名誉教授の加賀谷寛先生(I昭29)が「わが人生とウルドゥー語」と題して、ウルドゥー語とともに歩んだ五十年の道のりを述懐された。同教授は、東京外国語大学を卒業後、東京大学大学院で学び、その後、大阪外国語大学でウルドゥー語教育に努められた。多くのサラリーマンが、定年退職後は、のんびりと趣味を楽しむ傾向があるのに、加賀谷先生は、コツコツと辞書の編纂作業に取り組まれた。そして2005年、つまり先生が75歳の時に、日本で初めての本格的なウルドゥー語辞典(収録語彙3万5千、大学書林)を編纂刊行されたのである。会場では、厚さ8センチほどの分厚い辞書を手に取り、その外形的な重みだけでなく、内容の重みに驚嘆の声が上がった。先生は現在80歳のご高齢である。それにもかかわらず、この講演のために矍鑠とした姿で大阪から上京された。1時間にわたる講演の中で、ウルドゥー語研究者としての、良きライバルであったかもしれない故・鈴木斌(たけし)名誉教授(I昭31)について触れられた。鈴木教授は、時期をほぼ同じくして、加賀谷先生と同様、ウルドゥー語辞典の編纂を目指していた。しかし鈴木先生は、願いも適わず、志半ばで病に倒れ、辞書は世に出ることは無かった。加賀谷先生はこの点について触れられ、「鈴木先生が健康であれば、私よりも立派な辞書を出されたであろう。鈴木先生はさぞ無念の思いであったに違いない」と当時の心情を図らずも吐露されたのだ。この哀悼の言葉に、参集した同窓生は深く胸を打たれた。また加賀谷先生は、ウルドゥー語の中に含まれる多くのペルシャ語、アラビア語などの語彙から眺めると、ウルドゥー語の成長にはイスラーム文化、ペルシャ文化が大きな影響を与えている、とも述べられた。

bottom of page