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土井先生のひと言で…

土井先生のひと言で… 渡辺 一弘 1977年(昭和52年)H卒 土井久彌先生の生誕の年一九一六年は、タゴールが初来日した年でもある。その三年前にアジア人として初めてノーベル文学賞を受賞し、日本でも大きな注目と人気を集めていたベンガルのこの文学者が神戸港に到着したのは五月二九日。先生がこの世に生を享けられた日から一一日後のことだった。 などと知ったようなことを書いたが、一九七三年に大学に入学した当時の私は、タゴールの名さえ知らなかった。タゴールどころか、南アジアの事情についての知識は皆無であった。(中略) 入学して初めてのクラスが土井先生の授業だったと思う。先生はスーツに身を包み、いかにも栄養が足りていそうなつやつやとした顔色をされた方だった。 短いお話しの後で、黒板に面妖な文字を書かれた。物干し竿に洗濯物がぶら下がっているみたいだな、というのがデーヴァナーガリー文字を見たときの第一印象だった。 それから有気音についての説明があった。息が出る音と出ない音で意味の違いが生じるという話はとても新鮮に思えた。 「日本語や英語ではね」と先生は言われた。「hのあるなしは意味に影響しないんだよ」。何だか未知の世界に足を踏み入れた気がして、ワクワクした。 (以下は会報24号をお読みください)

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